2007/10/6 狂走曲「箱根」第4楽章
『越すに越されぬ酒匂川』
キヨ

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 子ども達の歓声で目が醒めた。青い空に浜風を受けて白いボールが飛んで行く。茅ヶ崎の海岸に程近い野球場。地元の少年野球チームの対抗戦が行われていた。一休みのつもりで芝生の上に横になったのが、つい眠り込んでしまったようだ。20〜30分ほどだろうか。先頭はどの辺りだろうか。JRグループも追い越して行っただろうな。今年で参加4回目の鉄人箱根ラン。

 1回目は大磯、3回目は二宮(2回目は午後に所用があったため藤沢で切り上げた)と、少しずつ距離を伸ばして来た。今年は、一週間前に3時間走、4日前にスクワット350回をこなし、これまでより少しは事前準備ができたような気がしていた。当日も集合場所までのダッシュでは足も軽かった。だから、取り敢えず目標は60キロ完走で走り出した。とにかく、ゆっくり、ゆっくりを心がけ、最初からほぼ最後尾を走ってきた。戸塚踏み切り前のコンビニでJRグループより先行し、そこからは一人旅だった。大坂上、藤沢橋と、事前にMOTOさんが送ってくれた行程表を頼りに距離を刻んで来た。何時もの事ながら、影取町から、遊行寺坂手前までの歩道の細かなアップダウンは堪えた。浜須賀までは、ヨッシー、じゅんくの二人組と、コンビニごとで抜きつ抜かれつしていたが、134号線に出たところで置いていかれた。そこからは歩いたり走ったりを繰り返しながら、辿り着いたサザンビーチ。国道から少し入ったところに野球場が見えたので、自販機とトイレを求めて立ち寄ったのだった。ところが、思わぬロスタイム。ここで、今回の目標は小田原14時30分に変更し走り始める。

 すると、道路の向こうから名前を呼ばれる。JRだ。かなり先まで行っていると思っていたから少し驚き気づくのも遅れた。一緒に行こうかと迷ったが、寝覚めで少し調子が良くなっていたので、そのまま先に行くことにする。右膝の痛みが気になり始めるが、大磯駅前に、小走りながらも歩かずに到着。しかし、まだ37キロ。酒匂川越えすらも怪しくなってくる。バス停の時刻表では後7分ほどで、国府津行きのバスが来る。中間をカットして小田原から走ることも考えたが、次回以降の目標の為にも、行けるところまで行くと、決める。

 駅前を過ぎて少し行くと和菓子屋の看板が見えて来る。立ち寄り、漉し餡と粒餡の饅頭を一個ずつ買う。来年からの休憩所の目標にしようと思う。疲れているせいもあってか、美味い。ただ、食べ終わると猛烈に喉が渇いてきた。ここからは、再び、歩きを走りの繰り返し。小田原も諦める。そんな私にさらに、追い討ちをかける光景が現れた。

 大磯駅前を過ぎて苦心惨憺、かなり来たはずなのに、左手に大きな白い建物が見えて来た。まさか、とは思ったが、近づくにつれ、はっきりと読み取れるようになって来る『OISO PRINCE HOTEL』の文字と見慣れたトレードマーク。「マジ、まだ大磯の町の中ですかー!って感じ。きっと、大磯の町は横に長いんだべ。」と自ら慰めていると、今度は『国府新宿』と表示された交差点。「国府、ってえことは、国府津の直ぐ手前どすなぁ〜。じゃけんど、これじゃぁ、行程表と合わねぇし、確かまだ、二宮は過ぎてないじゃん。」と、頭の中の言葉も狂ってしまうほど疲れ悩んでいると、やはり二宮まで2キロの標識。確かに、「東京の日本橋から新宿までもそこそこ距離があるからな。」と落胆。そう言えば、国道脇の日本橋からの距離表示も70キロを過ぎた辺りから縮尺が倍になったような感じ(倍になるのに縮尺という言葉づかいは間違いでしょうか)で、いくら歩いても次の1キロが出てこない。

 二宮を過ぎて、今度はウォーキングを楽しむ男性と抜きつ抜かれつになる。「こちらは横浜来ているんですよ。」と言いたいところだが、訊かれもしないのに言うことも出来ず、なんともみっともない。ともあれ、最長不倒距離を更新したので、今回の最終目的地は国府津とする。なばら、15時までにはカッパ天国に着けるだろう。このペースで行けば、第5楽章でいよいよ、酒匂川越え、第6楽章で風祭、そして、第7楽章で完結を迎えよう。「いつまでも、あると思うな金と時間(ちょっと違うかな?)」、という教訓は考えないことにして、まだまだ、楽しみは先にとっておくことにしよう。

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