アイアンマン カナダ 完走記 (マツ)

うわっ!パンクだ!!こんな時に!何てこった!!!BIKEスタートの直後、大観衆
の目の前でタイヤ交換をするはめになってしまった。タイヤはリムセメントでがっちり
着いていたが、カッターで切って取り、すばやくスペアのタイヤを取り付けた。だがし
かし携帯ポンプで空気が入らなかった。どうやってもだめだ。そういえば今までスぺシ
ャライズのホイールにこの携帯ポンプで空気を入れたことがなかった、と今更後悔して
みても始まらなかった。悪戦苦闘していると、天の助け、トライオールスリーの奥村さ
んがポンプを持って飛んで来てくれた。良かったと思ったのもつかの間、今度はアタッ
チメントが合わなかった。結局奥村さんが別のポンプを持ってきてくれて、やっとのこ
とでタイヤ交換終了。大観衆の盛大な拍手の中、再スタートをきった。ところが、手を
振って拍手に応えたとたん、転倒!!起き上がってBIKEを見るとタイヤが外れてバ
ルブが折れてなくなっていた。嗚呼、一難去ってまた一難!接着材不足だ。リムセメン
トは持ってなかった。奥村さんがまた飛んで来て、いったんトランジットに戻ってメカ
にリムセメントを借りたらどうかと言うので戻ることにした。とぼとぼとぼとかっこ悪
いスタートゲート迄の100mだった。
実は昨日タイヤ交換して、元付けていたタイヤをスペアとして2本持っていたのだが、
リムセメントの上塗りはしてなかった。トランジットにはメカはいたがリムセメントは
なかった。残ったもう1本のスペアタイヤを付けてくれてこれで大丈夫、パンクしても
メカがスペアタイヤを何本か持っているので、何とかなると言うので、このままスペア
なしで行くことにした。再々スタート、再度盛大な拍手を浴びて、今度は慎重に手を振
った。この間12分10秒の出来事だった。

とんだ出だしになってしまった。頑張ろう!という気力も何もなくなってしまった。し
ばらくは無気力にペダルを踏んだ。何人かの女子選手に抜かれた。
スイムは1時間20分台であがった。3年前とほぼ同じ記録でまずまずである。私が浜辺

あがってくると、ちょうど放送でYAMAGUCHIfromJAPANという放送が聞こ
えた。ひょっとしたら我らの山ちゃんかもしれない。私は今回スピードのスイムパンツ
に鉄人ノースリーブで3種目全てこなすつもりでいた。もし、山ちゃんならトランジッ
トで逆転だ、と気分良くBIKEをスタートした直後のアクシデントだった。バイクラ
ックにかけてあるうちに空気が抜けいて、BIKEに乗ってからそれに気付いたのだ。
後から思えばパンクではなかったかもしれない。状況判断を誤ったかもしれなかった。

BIKEコースは14キロから30キロにかけてアップダウンがあるが、65キロまで
はフラットで追風のコース。スタート地点の標高は342m、65キロ地点は277m
。ここまでの10キロ毎のラップは18:56−22:02−20:15−16:37−17:42−17:37だった
。追風に乗って雄大なカナディアン大地を走るうちに気持ちは落ち着き、レースに集中
出来るようになってきた。
65キロからはカナダアイアンマンの醍醐味であるスケールの大きなアップダウンが始
まる。まずは11キロで405m上がるヒルクライム。長い直線の上り坂が3回続く。ペー
スはガクンと落ちて70K 32:31−80K 24:03だった。サミット手前の#8エイドで「マツ
ノさーーん」という平井さんの声が聞こえたが、姿は確認出来ず、何をしていたのか判
らなかった。(ヴァンテリンを塗っていたそうです)上りでは特に暑さがこたえた。今
年のペンディクトンは3年前に比べると格段に暑かった。樺太と同じ位の緯度なのに連
日30度以上の晴天が続いていた。暑さで首筋がカッカして何度も水をかぶった。エイ
ドでもらう冷たい水はすぐお湯になってしまった。エイドでは最優先に水をもらった。
サミットを過ぎると今度は長ーいダウンヒル、本来ならばここは時速70キロがでるとこ
ろだが、私は下りがへたなうえにさっきの転倒の恐怖もあって、ブレーキをかけたよろ
よろ走りになってしまった。その後は長いアップダウンの繰り返しでラップは90K 22:1
3−100K 22:52 その後は平坦な20キロ、ここは3年前は19分台でクリアしたところだっ
たが、今年は向い風でまったくスピードは上がらず110K 23:29− 120K 23:26 その後
追風の中130K 19:21、折り返して向い風で140K 24:46 ここはBIKEコース中唯一の
折り返しコースで、仲間の位置が確認出来る。路面はがたがただった。山口との差は1
〜2キロ、もう少しで追いつけそうな位置だった。平井さんも頑張っていた。まだまだ
元気そうだ。鈴木がいない!鈴木はどうした?てっきり見損なって先に行ったと思って
いた。
ここにはスペシャルエイドがあったが、今回はなにも置かなかった。今回の補給食は梅
干し4個、カーボショッツ12個、蜂蜜入り紅茶1ボトル(50キロ位まで持った)です。エ
イドでは水、スポーツドリンク以外はバナナ半分を2回もらっただけだった。
折り返しコースが終わると最後の上りの始まり。きつかったけど3年前一度走っている

で思っていたよりは楽に上ることが出来た。でも時間はたっぷりかかった。ラップは15
0K 29:45−160K 26:29だった。そして最後のダウンヒル、ここは路面が悪く横風が強か
った。相変わらずのブレーキング走行で時速30キロで下った。情けない。最後の方の緩
やかな坂になって少しスピードを出した。
170K 20:42−180K 20:09 何とか無事ペンディクトンに帰って来れた。

トランジットのテント内で山ちゃんと会った。山ちゃん先にランスタート。私は小タイ
ムの後、ラン開始。身体は良く動いたが、調子に乗ってとばしすぎないように、気持的
にはとにかく楽に走ることを意識した。マイルラップ10分以内(ちなみにキロ6分はマ
イル9分36秒です)で楽に走って30キロまで行きたいと思っていた。今までのロングト
ライアスロンではハーフ地点までは何とかキロ6分ペースで行けたが、後半ハーフはい
つもペースダウンになり、苦しい思いをしている。ランのエイドは1マイル毎だった。
走る前は、全てに寄っているとタイムロスになるので一つおきに寄ろうと思っていたが
、いざ見てしまうと誘惑には勝てず、全部にお世話になった。でもこれは脱水症状にも
ならずに30度を超える暑さの中完走出来たのだから正解だったと思う。エイドでもらっ
たのはもっぱら水とスポンジで、固形物で食べたのはスイカだけだった。自分ではカー
ボショッツを持って走った。今回は5キロ毎の表示が途中まであって、後で計算したら5
K 28:09−10K 29:45−15K 31:08のラップだった。ほぼキロ6分台で走っている。山ちゃ
んにはなかなか追いつけなかったが、11番エイド(11マイル)でついに発見。ウエストボ
トルに水を入れてもらっていた。「オー!山口!!」と声をかけて先を急いだ。山ちゃ
んはこの後つぶれて傾いて走っていたら、証拠写真を撮られてしまった。折り返し(中
間点)通過は10時間40分だった。ランスタートしてから約2時間10分、後半つぶれなけれ
ば12時間は切れそうだが微妙な数字だ。

今回は最低の目標として3年前の記録13:08:48をきること、次の目標は13時間をきるこ

、次は12時間半、次、あわよくば11時間台と数々の目標を設定してあった。BIKEの
アクシデント直後は完走だけが目標と弱気だったが、徐々に上方修正が出来て今や目標
は12時間台まであがった。ランでは思いのほか身体が動いていたので欲が出てきた。と
ころが、折り返すとエイドでの休みが多くなったからか、上り坂があったからか、マイ
ル10分以上かかるようになってしまった。ここはじっと我慢である。無理して頑張るの
でなくリラックスを心がけて走った。そしていつのまにか30キロも過ぎていた。あと5
マイルの21マイル地点(33.6キロ)に来たところで余力があったのでペースを上げてみた
ら、なんとその後はマイル9分そこそこのペースで走ることが出来た。ここに来てのマ
イル9分ペースは回りの選手と比べて格段の速さである。次々と気持ち良く前を行く選
手をパスしてゴールに向かった。12時間49分14秒でゴールイン!

今回の結果は記録的には不満だが、いったん落ちた気力から盛り返し、自己新でゴール
出来たことは本当に良かったと思う。特にランの後半あんなに速く気持ち良く走れたの
は初めてのことだ。結果的にランでは、前半2:09:20−後半2:09:14と計ったようにぴっ
たりのタイムだった。そして驚いたのは翌日順位の発表があってからのこと、、、


656/1469   12:49:14 MATSUNO, YOSHIMI    1:20:30(1357) 7:10:07(1107) 4:18:38(258)
1022/1469  14:01:30 YAMAGUCHI, NORITAKE  1:19:16(1303) 7:09:16(1103) 5:32:59(936)
1462/1469  16:51:01 HIRAI, FUMIAKI        1:16:25(1187) 8:08:55(1424) 7:25:41(1454)
1703            SUZUKI, YOJI         1:37:46(1650) BIKE70キロ付近でリタイヤ

エントリー:1965人  SWIM終了:1719人  BIKE終了:1586人  完走 :1469人 

自己記録と言っても20分程度縮めた位では、参加人数も増えているし、当然1000番台だ
ろうと思っていたら、何と656位、しかもランの順位は258位ではありませんか!? 順
位だけを見ると素晴らしい、驚くべき成績である。順位を聞いたら急にうれしくなって
ウキウキしてきた。現地の新聞を見ると暑さと強い風でトッププロの記録も悪かったこ
とが記事になっていた。確かに8時間台は優勝したブストス一人だけで、全般的に記録
は低調。スイムを終えてからの棄権が250人もいたことが、過酷なコンディションを物
語っている。参考までに40−44のスロットは11時間47分、45−49のスロットは11時間50
分と例年より1時間も悪いタイムだった。
今回のレースでもトライアスロンの難しさを痛感した。それでももっと強く速くなれそ
うな感触も得た。そしてアイアンマンへの挑戦はこれからもずっと続く。