2014−6 - 8 アイアンマンケアンズ 2014完走記
−−これでアイアンマン12戦、来年はいよいよ??−
Mr.ビーン

■出だしからハプニング、これでは完走も危ない?
やっちゃったなー、こりゃあまずい…。とにかく一人ずつ抜いていくしかない。現時点で自分がほぼ最後尾なことは間違いないから、のんびりバイクをこいでいたんでは完走すらおぼつかない。スイムが遅いのはいつものことだが、ここまで最後方に下がってしまったことはかつてない。スイムフィニッシュの時点では自分ではまあまあのタイムだったのだが…。
カンレキさんの話ではバイクフィニッシュの制限時間は10時間だったはずだが、バイクの途中でも足切りタイムが設定されているということだった。それは確か2週回目の110キロ地点のポートダグラスのようだったが、はたして制限時間は何時間だろう? 自分が最後尾にいるとすると、それに引っかかる可能性も多分にある。バイク途中での足切りだけは免れたい。バイクフィニッシュさえすれば完走はできるだろう。
スイム会場のパームコーブを過ぎてようやく正規のコースに戻る。さらに数キロ走った頃、前方にようやく最初の(現時点でブービーの?)選手が見えてきた。この選手を追い抜いて、ようやく最後尾からは脱したことになるが、依然として先は長い。



■前日は大波、試泳でブルーに
6月8日6時、まだ暗いパームコーブのT1。降り続く雨に濡れた芝生はすでに選手たちに踏まれて足もとが悪い。バイクに空気を入れ、トイレの行列に並び、ウエットスーツに着替え、スタートの支度は完了。隊長、ナミさん、ヨッシーたちと浜へ向かう。なんとなく腹が減ってしまい、隊長からおにぎりをもらい、ナミさんにバナナをもらう。
昨日の試泳のときは大波が打ち寄せ、潮の流れに押し戻されて思うように泳げなかった。宿に帰ってからも、明日のスイムのコンディションの話題ばかり。日本ならスイム中止もあるが、海外の大会ではあの程度の波ではスイムキャンセルはあり得ない、というのは32さんの情報。同室のカンレキさん、ヨッシー、二人のリベンジ組もあの波では、と次第に話題は湿りがちになっていったのだった。今朝は雨は依然として降り続いているものの、海は多少の波とうねりがあるだけで、少しほっとする。海に入って少しばかりウオームアップ。このくらいの波なら何とかなりそうだ。
やがてプロがスタート、その5分後、7:55にエイジグループがスタートする。集団の右後方から海に入り、なるべく人のいないところを泳いでいく。スイムコースは長方形で沖の正方形の部分を2周する。コース上には各辺に3つ、合計8個のブイがあるから、数えながら泳いでいくと2周回で15個のブイをクリアしてゴールすることになる。スイムスタートとゴールは数百メートル離れているから、この形のコースだと早い選手と遅い選手がラップする心配がない。
浜から沖へ向かう直線ではうねりのためにブイが見えにくいが、それ以外では山や島の形が目標になるから、比較的泳ぎやすい。水はきれいなのだが波は荒れており、サンゴの細かい砂で濁っていて、手首くらいまでしか見えない。途中で左のゴーグルから水が漏れてきて気になって仕方ない。もっときつくしておくんだった。2周回を終えてゴールへの直線へ向かう。ようやく浜へ、スタートの時より波が出ていて、なかなか立ち上がれない。よろめきながら浜へ上がり、トランジッションへ。タイメックスを見ると1:35:XX、自分としては上出来であろう。バイクジャージを着てシューズをはく。ふだんははだしでシューズをはくのだが、どうも雨が気になったのでていねいに足をぬぐってソックスをはく。バイクラックにぽつんと残ったP3をかついで、びしゃびしゃとはねを上げながらバイクスタートへ。
Swim 1:35:25
TR1 13:57



■ん? 周囲は緑のゼッケンばかり?!
スタートしてしばらくは曲がりくねった公園の中をゆく。自動車のスピード抑制のためかところどころに段差があり、スピードは出せない。降り続く雨に、これではちょっと寒いかなと思い、いったん停止してウインドブレーカーを着る。
やがて公園を抜け道路に出る。スタッフの誘導に従って道路を左折する。先ほどからバイクのメーターが動かないので気になっている。このポラールはニューヨークでも全く役に立たなかった。その後は練習の時も、洞爺湖でも普通に使えていたので、使い方は理解できたつもりだったのだが、今朝、バイクラックに来た時にスリープモードになっていなかったのが災いの予兆であった。案のじょう、メーターが全く作動しない。センサーの問題ではなく、ボタン操作を全く受け付けないのだ。前方の選手とのドラフティングの間隔を気にしつつ、いろいろボタンを操作してみるが駄目である。それにしても周りの選手の遅さが気になる。コースは道路の左端をコーンで仕切って、2メートルほどの幅しかないから、追い抜くのにも気を使う。
それにしてもおかしいぞ、と思い始めたのはすでに数キロ走った後のことである。対向車線に折り返してくる選手がいないのだ。コースはスタート直後に左折して南へ向かい、その後すぐにUターンして北へ向かうはず。あらためて周囲のバイクをよく見ると、緑色のナンバーカードばかりである。この大会ではバイクでは背中にゼッケンを付けていないから、分かりにくかったのだが、どうやらアイアンマンのコースとは逆に南へ向かう70.3のコースに紛れ込んでしまったのである。
それでも誰かに確認できないかとスピードダウンしながら探すのだが、マーシャルもボランティアも見つからない。しかたなく応援の集団がいるところで停止して聞いてみる。その親父さんは「大丈夫間違いない、このまま走れ」という(そう言っているらしい)。ナンバーカードの色を示して、赤い色の選手が来たか?と聞くと、「???」と首をかしげる。だめだ、この人は2種類のレースを理解していないな…。遅まきながら、ここで腹を決めてコースを逆戻りすることにする。狭いコースの端を70.3の選手に逆行してしばらく行くが、これは危険だ。仕方なく道路を横切って対向車線を北に向かう。距離は不明であるが、南へ約20分も走ってしまったことになる。この大会で以前ミスコースをした選手がいるということは聞いていたのだが、自分がやってしまうとは思わなかった。往復で40分のタイムロスか、これは痛いなー。ちゃんとコースに戻れるだろうか、それも心配である。


■最後尾から、必死に追い上げるも…
間違えた道を戻るのは長い。昨日、試泳に行くときにバスで来た道をそのまま北へ。そういえばあの動物園もあったなー、などと情けない思いで眺めながらようやくパームコーブへ。ここからようやく正規のコースに戻る。すでにスイムスタートからは2時間半近く経過しているから、ほぼ自分が最終の選手だと思って間違いはない。ランのことなど考えず、ひたすら追い上げていくしかない。気になるのは、バイクの足切りにかからないように、そればかりである。
日本国内のレースだと、最後方には遅い選手がかたまっているものだが、さすがにそんなことはなく、選手の間隔は長い。ぞろぞろと抜けるようなことはなく、一人抜くとまた次の選手までが遠い。ようやく数人の選手を追い越した頃、後方からディスクホイールの音を響かせて、プロの選手がやってきた。早くも周回されてしまうのか、情けない。トップとは約70キロの差である。しばらくすると対向車線から「ビーンさん」と声がかかる。誰? 必死に走っているので仲間にも気づかない。ほかの人たちからも何人か声をかけられたのだが、それにこたえる余裕もない。
道はアップダウンを繰り返しつつ、コース北端のポートダグラスへ向かう。ずっと雨が降り続いているから、バイクで無理はできない。何年か前のチェジュの時みたいなパンクも願い下げである。これ以上のタイムロスは絶対に避けなければならない。路面は荒れた舗装路から比較的良い舗装へと変わって、ポートダグラスの街へ入る。しばらく行くと古い街並みの通りがあり、盛んな応援の中を通り抜けると大きなスクリーンがあって、ここが折り返しだ。たしか去年はここでトラブルに見舞われた奴がいたらしい。
折り返すとコースは南へ向かい、やがて60キロの表示を通過する。ケアンズのバイクコースはたいした坂はないという話だったが、適度なアップダウンはある。コースが分かっていればノーブレーキでも下れるような坂だが、依然として雨は降り続いているからスピードの出しすぎには要注意である。上り坂では1週回目の選手を追い抜き、2週回目の選手に追い抜かれつつ走る。コース途中の距離表示とタイメックスだけが頼りである。そしてもう一度75キロ地点で折り返して再び北へ、ポートダグラスを目指す。
それほど無理をして走っているわけではないのだが、もうかなり前から脚の痛みが気になっている。ペースダウンしても仕方ないのでこのまま走るしかない。再びポートダグラスの街に入る。先ほどのように盛んに応援してくれた人々の数はすでに少なく、自分がレースの最後方にいることがよく理解できる。2回目の折り返しを回って再び南へ。関門が正確にはどこなのかわかないが、どうやら足切りは免れたらしい。しばらく行ったところでカンレキさんとすれ違った。あとは一直線にゴールのケアンズをめざすのであるが、まだ残りは70キロほどもある。めっきり選手の数も減ったコースをひたすら南へ向かう。最後の坂の途中で理事長に追いつく。ギヤの音なんか変じゃない、トラブル? 「え、そう? なんでこんなところに?」と、理事長。それはお互い様。


■長〜いバイク、なんとか完走はできそうだが…
今回用意した補給はパワーバー2本とパワージェルが3個、いつもの梅チューブが2本。バイクとランのスペシャルに赤飯のおにぎりとレッドブル、あとはエイドが頼り。エイドではバナナとジェルを交互にもらう。ジェルは薄めなのかあまり粘度が高くなく、飲みやすいといえば飲みやすいが、ちゃんとカロリーがあるのかなー、と疑問である。バイクでは焦っていてスペシャルの場所も分からず、結局取りそこなった。後半、補給を食べつくし、これではランが持たない。エイドでジェルをまとめて5つくらいもらう。
ポートダグラスを過ぎればほとんど町もなく、左側には南太平洋の海が広がっている。ところどころには応援してくれる人々もいる。集団でウエービングをしてくれるグループもいたりするが、あとは大自然の中である。浜辺を過ぎ、森林を過ぎ、クリークにかかる橋を越えていく。あのクリークには間違いなくクロコダイルがいるな、などとようやく余裕のできた頭で考える。
やがて左前方の海の彼方に二つコブのある島が見えてきた。あれはスイムコースから北に見えた島(松岡さんのいう「ひょうたん島」)だな、もうすぐパームコーブだ。パームコーブさえ過ぎればケアンズはすぐだ、という思い込みなのだが、それでもまだ30キロ近くあるだろう。
やがてパームコーブを過ぎると、見覚えのあるコースに入っていく。バイクのしょっぱなに間違えて走った70.3のフィニッシュへのコースである。はるか左前方を飛行機がゆっくりと降下していく。あれはケアンズ空港だ、まだあんなに遠いのか、と思う。残りは20キロくらいだろうか、この分ならなんとか9時間ほどでバイクゴールできそうだ。
やがてコース脇にススキの野原が現れてくる。しばらく行くとコースは左折する。これでケアンズの街に入るのか、もうすぐゴール?…しかしこれは勘違い。やがて空港が左側に見え、しばらくするとランの選手がコースを往復しているのが見える。ようやくケアンズだ。もう薄暗くなっている街へ入っていく。
ケアンズのメインストリート、「エスプラナード」のバイクゴールへ。右側に立ち並ぶレストランにいる人々も盛んに応援してくれている。もっとも自分が応援されているのか、左側のランナーたちが応援されているのかわからないのだが…。
Bike 7:06:55
TR2 12:15  Sp. 8:56:17



■もはやランモードは復活せず、つらい42.2キロ
ランにスタートした頃にはすっかり暗くなっていた。周回チェックのバンドを受け取り、最初の周回に向かう。右側のゴールではゴールする選手たちに盛んに祝福の声援が送られている。バイクゴールはなんとか9時間を切れたから完走はできるだろう。
レストランが立ち並ぶ港のワーフ(?)ではボランティアなのかただの客なのか、盛んな応援の中を通り抜ける。そしてコース南端の折り返しへ。もう一度レストランの間を通って公園へ、さらにコース北端の空港の手前まで行って折り返す、この区間を3周回するのである。ランコースは以前とかなり変わっているようで、公園の途中にも1個所余計に折り返しがある。
距離表示はあるが、コースは複雑なので、自分の位置が分かりにくい。しかし、多分モトさん、隊長、ミツさんあたりは最終周回なのだろう。自分の後ろにいるのは理事長とカンレキさんくらい。ヨッシーはどうか、ナミさんも分からない。ゴール付近では道ちゃんと高野さんが応援してくれている。
数キロ走ればランモードになるかと淡い期待を持っていたのだが、足は依然として重く、もはや復活しないことは明らかであった。エイドではジェルをもらって飲む。うまくない。あとはスペシャルのレッドブルでなんとか復活できないか。
2週目、コースの北端の折り返しの手前でスペシャルをとる。もうおにぎりも食べる気がせず、レッドブルだけ飲んで返却。あと1周半、だんだんランナーも少なくなってくる。
雨は朝からずっと降り続いている。激しく降ることはないが、小やみになることもない。シトシトでもなく、ザーザーでもなく同じように一日中降っている。公園の中の遊歩道はすべて舗装されているが、ところどころ水溜まりも出来て、1か所草地を横切るところはぬかるんでいる。ふだんならシューズが濡れるのは嫌なものだが、もう水たまりも泥も気にしていては走れない。
3週回目、波止場のレストラン街を過ぎたところでカンレキさんに追いついた。ナミさんがすぐ先にいるらしい。ひょっとして同じ周回? 公園の折り返しの先でナミさんを追い抜いた。いったん追い抜いてしまうとペースが落とせないから、あとがつらい。べつに誰に抜かれてももうたいした違いはないのだが、一人でも多く抜く、その意地だけで走っている。空港手前の最後の折り返しを回ればあとは4キロくらい。レッドブルの効果もさほど感じられず、あとはこれ以上ペースを落とさずに走るだけ。
ゴールまであと500メートルくらい。エスプラナードのレストラン街の最後の直線で足に「S」の字の60-64の選手を発見。ゴール直前に追い抜いた。まあこれくらいで良しとするか。そして、まぶしいライトの輝くゴールへ…。
Run 5:02:23
Total 14:10:55
Overall/1005
AG/27




●失敗はともかく、これでアイアンマン12レース。ロング全体では25大会を完走したことになる。「12回も出てハワイに行ってないやつなんて、いるのか?」と隊長は言うが、確かにごもっとも。これで来年は…、本当に??

●「バイクコースで間違えるようなところあった? よく間違えたね」とカンレキさん。これも確かにごもっとも。

●結局8日間の中で晴れたのはグリーン島に行った火曜日だけ。グリーン島は魚もカメもたくさんいてシュノーケリングが楽しめる。最高の休日であった。

●コンドミニアムは駅のすぐ近く。もっとも駅にはあまり用はないが、駅のショッピングモールが便利である。部屋も広くてバイクの整備もベランダでできる。

●チェジュや話に聞く台湾よりも、ケアンズはアクセスもいいし行きやすいと思う。コースも走りやすいし、お勧めの大会である。

●ところで、ハンバーガーはナイフとフォークで食うんだよ! かぶりつくとアゴが外れるよ。


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