2010-10-9アイアンマン・ハワイ・ワールド・チャンピオンシップ2010完走記ツカ

【スイム】
 6時40分、カイルア・コナの小さな砂浜に立つ。満潮のため、その小さな砂浜も水没してしまっている。目の前に広がる広大な太平洋の小さな入り口は、千数百名の選手で埋まっている。既に泳いでいる選手も大勢いる。朝の涼しい風の中で、自分は入水に躊躇している。膝下まで水に浸かり、ここまでの道のりを思い浮かべる。
「猛暑の夏をあれだけ頑張って来たんじゃないか、何も恐れる必要は無い、自信を持って思い切って望むだけ」 と自分を鼓舞する。

 スタート8分前、意を決して水の中へ身を投じる。程なく冷たさは和らぎ、フローティングスタートラインへ到達する。立ち泳ぎしながら360度見回す。鈴なりの応援、ファラライ山から上る朝日、朝日に反射する水面。腕時計を見てスタート時間に近付いたのを確認していたら突然のキャノン砲、「ドン!」と言う鈍い低音のスタート合図。

 バトルの中、自分の位置を必死に探しながら泳ぐ。ここのところスイムに自信を無くし、トレーニングも辛い思いをしていたので無難に終わらす事だけを考えて泳ぐ。折り返しのボートを回り復路に入ってから時計を確認したら36分を過ぎていた。目標は1時間10分切り、遅すぎてがっかりする。復路は朝日が昇ったファラライ山を見ながらのブレス。何回何千回、腕を回しても回しても中々景色が変わらない。スタート地点と同じ砂浜のゴール地点が近付いて来た。声援とMCの大きなスピーカーからの声が段々と大きくなって来る。やっと立てる深さまで来て足を着く。時計を確認、1時間14分、ハワイワースト記録でショック。

【バイク】
 この夏一番練習したバイク。序盤はコナの街を行ったり来たり。十数キロ地点の再びコナの街の中へ戻って来て、パラニロードの上り坂、鈴なりの応援の中をアウターで立ち漕ぎ。その中で丸さん、タケさん、せっつさんの大きな声援を受ける。坂を上り切ると左折してクイーン・カアフマヌ・ハイウェー、通称クイーンKへ入る。ここからが勝負。

 序盤は特に飛ばしているつもりは無いのに、メーターを見ると50キロ表示。広大な溶岩台地はスピード感を感じさせる物が無いので、感覚としては40キロ前後。とても不思議な感覚だ。無理をしないように努める。

 50キロ地点くらいだろうか、ちょっと前のバイクを追っかけて差が詰まっていた時に、左後方に審判のバイク。「やばい!」と思い、ゆるゆると下がって行き、「大丈夫かな?」と思っていた矢先に、
「ナンバー485、レッドカード」 と言われ、サッカーの時の様にカードを提示された。即失格では無いのだが、生きた心地がしなかった。ハワイのルールでは、ペナルティカードを受けたらコース上に3箇所有る最寄のペナルティボックス(テント)へ行き、ペナルティを受けなければならない。レッドカードを提示された時に近くを併走していた外人が、自分に何かを言っていた。多分「気にするな!」的な事を言って、自分を勇気付けてくれていたのだと思う。まさか、「ヘイ!ジャップざまあ見ろ!」とは言って無いと思うけど(笑)。自分の責任とは言え、重い心を引きずりながら走る。

 クイーンKを左折して19号線へ曲がり、いよいよコナウインドの強い場所を折り返し点のハヴィへ向かう。右から強烈に吹き付けるコナウインド。バイクを右に傾けながら飛ばされないように走る。

 約100キロ地点のハヴィの折り返しを過ぎてスペシャルを受け取り、直ぐのペナルティボックスへ入る。
「あなたはレッドカードか?イエローカード?」 と質問され、
「レッドカードだ」 と答える。
係員はストップウォッチをスタートさせ、DHバーのアームパッドに時計を置き、「触るなよ、4分間の停止」と言う。背中のゼッケン、ヘルメットのナンバーシール、バイクのゼッケンプレート全てに赤いペンで斜線を引かれる。ペナルティを受けた旨の書類にサインをする。バイクを降りて屈伸、せっつさん、タケさんに貰った漢方薬(痙攣、攣り防止)を飲む。4分を待たずして、「行っていいよGO!」と言われる。レース再開。

 特別速いとは言えないタイムですが、自分としては最後まで垂れる事無く、気持ちも切れず走り切ったバイクでした。

 バイクのエイドステーションで壮大な景観を見ました。何とボランティアの数がザット見ても百名は居たと思います。そのボランティアが一列になってボトル等を持って並んで居るのですから、それはそれは凄い景観でした。流石ハワイです。また、ハワイでは初めて6時間(5時間54分)を切りました。メーターのアベレージは最後まで30キロを維持したままでした。当たりマエダのクラッカー。

【ラン】
 トラジッションテントに入る。バックに入れて置いたワセリンをたっぷり足に塗り靴下を履く。走り出しても中々ランの足に切り替わらない。がまんがまんの走り。段々とランの足になって来ても慎重に慎重に走る。走りのスピード感はキロ5分。このままで行けば3時間30分。目標は40分切り。

 エイドでは身体を冷やすこと、カロリーを摂取することを心がける。パワージェルを無理やり口に流し込む。オレンジを食べる。コーラを飲む。水を被る。帽子を目深に被り自分の世界に集中する。

 今までの実力では最初から絶対適うはずの無い日本人が、ランに入って自分を抜いて行った。「えっ!ここまで自分の方が先行していたの?」と抜かれたにも関わらず嬉しかったです。アリイドライブを南下して、折り返して再びコナの繁華街へ入る。クラブ員の熱狂的な応援に元気付けられ、バイクと同じパラニロードの上り坂を上る。ここでも別の日本人の熱狂的な声援とハイタッチで勇気付けられる。上りきったところで左折してクイーンKを走る。まだまだ元気。

 考える事は、後何キロなのか?ところどころに表示して有るマイル表示の看板を見て、頭の中で必死に「距離計算をする」の繰り返し。
「いま○○マイルだから、×1.6で、え〜と、え〜と、○○キロだな」 なんてネ!

 空港手前のエナジーラボ入り口を左折、海に向かって走る。今まではハワイのレースでは、ここを通る時は陽が沈みかけていたが、今はまだまだ陽が高い。エナジーラボを折り返し、再びクイーンKに入り、コナの街を目指す。大きなうねりのクイーンKをスピードが落ちたり上がったりを繰り返す。

 あと約10キロ、
「何時も練習しているかもめ町をたった5周じゃないか」 と自分に言い聞かせる。
あと6キロ
「何時も練習しているかもめ町をたった3周じゃないか」 を反すうする。

 いよいよクイーンKともお別れしてコナの街のパラニロードを下る。目標の11時間切りまで後僅か、下りを利用して飛ばす。コナの街を迂回してコナベイホテルからフィニッシュロードのアリイドライブを右折。フィニッシュまで約400メートル地点で11時間まで残り3分。ここで11時間切りは今のこの足の状態では無理と判断し、フィニッシュロードを満喫する事に集中する。

 フィニッシュまで100メートル手前で丸さんに日本国旗2本と鉢巻を受け取り、思いっきり日本をアピール。ゴール地点では思いっきり「ウォー!!」と雄叫びを上げる。ランタイム3時間41分。トータルタイム11時間1分。

【フィニッシュ】
 初めて明るい内にフィニッシュ出来た事が何より嬉しい。フィニッシュ地点では皆が待っていてくれた。マッサージを受け、写真を撮り、アイスを食べ、ピザを食べ、バイクを受け取りホテルへ帰る。シャワーを浴びて、軽食を取り、しばしの休憩。ここでマッサータケさんの本格的なマッサージのサービスを受ける。実はレース前には丸さんの足裏マッサージのサービスを受けており、クラブ員には家族以上のもてなしで、本当に感謝感謝です。

 いよいよ制限時間が迫ってきた22時30分頃に皆で最後を見届けに再びフィニッシュ地点へ行く。最高の盛り上がりの中、怪我をして傷付いてフィニッシュする選手に大きな拍手と声援が送られる。こちらもウルっと心に響く。80歳最高齢のアメリカ人男性は制限時間1時間以上前にフィニッシュして大きな感動を呼ぶ。女性最高齢75歳のアメリカ人女性選手のフィニッシュにも再び大きな感動。そして、制限時間17時間の午前0時へカウントダウン、5,4,3,2,1,0。MCマイク・ラリーの「you are an ironman」のアナウンスで2010のアイアンマン・ハワイは幕を閉じた。


【その他】
スイムに関して。
 今回ハワイのスイムは自己ワーストでしたが、チャイナの時にスイムで2分負けていた方に、今回は10分も勝っていたんです。その他の選手にもその様な現象がありました。チャイナはウエット有り、ハワイはウエット無し。ウエット有り無しだけでこんな事が起るんですかね?
 また、ウエット禁止のレースでは従来のラバーコーティングしたスイムスーツが禁止になり、新たなスイムスーツが販売されていました。お金がいくらあっても足りません(涙)。
(写真と本文は関係有りません、参考のための物です。)

バイクに関して。
 今はTTバイク花盛りですが、本当にTTバイクって必要なんでしょうか?自分は普通の丸パイプのロードバイクの105パーツですが、それでも今まで適わなかったライバルのTTバイク+電動シフト(デュラエース)+ディープカーボンリムに勝ったのですから。でも自転車屋さん曰く、「ツカさんそうでは無いですよ、他人と比べるのでは無く、自分が使ったらもっと速くなるかも知れない?って事ですよ」とね!そりゃあそうだ。でもね、カローラでフェラーリを抜いた気分です。
(写真と本文は関係有りません、参考のための物です。)

ランに関して。
 ここのところの2レースに関しては一応自分としては成功しています。やはりバイクの練習がランに足を残したのかな?勿論ブリックトレーニングはちょこちょこ実施していたし、月一ですがヤッソもやっていたおかげかもしれません?

補給に関して。
 スタート前にOS-1(200CC)、ベスパ1袋。バイクボトル3本はOS-1と味の素スーパークエン酸を3包分、グリコCCDを3包分。バイクフレームにツムラの痙攣防止の漢方薬とベスパ。ランの時も帽子の裏側にツムラの痙攣防止の漢方薬を貼り付けて置きました。スペシャルはバイクもランもベスパとOS-1。エイドでは、バイクとランを通して全部でバナナを2本くらい、パワーバーを1本、パワージェルを6包くらい、オレンジ3切れ、コーラと水とスポーツドリンクを適宜って感じでした。


home back