2010-9-5リベンジャーおスギ

 ことは、2009年9月。佐渡A、ラン13kmでリタイアを決めたことから始まった。

 スイム3.8km、バイク190km、ラン13kmでリタイア。満足していたはずなのに・・・。自分だけ完走タオルがない惨め感、フィニッシャーポロシャツとボランティアTシャツの区別のつかない自分に愕然とし、終わった感のないこの感じ・・・。よしゃ(よせば)いいのに、再度、挑戦を決めてしまった。今度は、チャレンジャーじゃなく、リベンジャーとして。

 リベンジャーの一年。最初にしたことは「なんちゃってトライアスリート」から「ヘタれアスリート」への改名。TVでテニスの杉山愛がスランプの時のお母さんの一言。「必死さがない」を聞いて、がーーん。必死さが「足りない」んじゃなくて「ない」だよ。私のことだよ。完走できると思っていて、必死さがなかったんだよ・・・・。何を練習しても完走できる気がしない。不安がつのる。

 家族、友人に「9月中旬まで予定がつまっている」と宣言し、お誘いは断りまくり。なのになぜか、今年はお誘いが多い。27年ぶりの同窓会とか、海外から友達が来るとか、いつも会えない友達から急に連絡が来るとか・・・。そして飲みに行き、翌日 起きられず練習をさぼって自己嫌悪・・・・。土曜日、バイク練習をさぼって自己嫌悪・・・。自己嫌悪になるくらいなら練習すればいいのに、私。

 そんな中、鉄人の掲示板を見て、「リハビリ練習会」ならと参加。(よく読んだら「リフレッシュ」になってたけど)あの隊長が後ろについてくれた。登り坂でも手が抜けない。ガデンさんが月1〜2回 山に連れて行ってくれた。折り返し手前で既に坂を見るのが嫌になった。鉄人の練習会にお邪魔させてもらい、様々な人の後ろについて風除けをさせてもらった。西湖の合宿では60kmまでパナさんの後ろにつき、河童さん、マツさんまで抜く!!ビックリ!西湖は、いつも2周回遅れにならないように頑張っていたのに。人を抜くなんて初めて。(その後、あえなくみんなに抜き返されましたが・・・)大観山も行った。昨年二度と行かないと決めたのに。二度も行った。二度目は、大観山から富士山が見えた。佐渡A完走の頂上が見えた気がした。

 レース前日に、佐渡入りし、バタバタとレース準備。生まれて初めて、みんなの真似をし、パワーバーを切ってみる。Nekoさんにオブラートをもらう。ずっと昔にダニエルさんにもらったお弁当箱のデビュー。トライアスロンを始めて、早15年。今年は初めてのことばかり。今年初めて、バイクに乗りながらボトルを飲めるようになった。

【SWIM:3.8km】
 あれっ。毎年スタートの曲が違うんだ。去年のロッキーとはうってかわって、穏やかな感じでスタート。海も穏やか。あれぇ、ウェットに空気がはいっている!? でも今は無理。第一ブイを折り返して、空気を抜く。とにかく泳ぐ。やっと第二ブイみっけ。ロックオン。まずはあそこに向かってと。第二ブイを折り返す。よくわかんないけど、確か、あの3本ついている電柱を目指せばよかったはず。 ・・・もー、あなた曲がってますよ。こういう人に限って、また来る。でも抜かすほど、速くもないし、体力もない。
 スイム3.8km:1:29 予定通り。

【BIKE:190km】
 さっさと着替える。ここが勝負どころ。何度もシュミレーションした。完走した人達のタイムを見て、何時に両津を出れば完走できるのか。両津(105km)まで11:30通過目標(4時間)。そして、バイクゴールは、目標15時(3時間半)。少しでもランのための時間を残す。「しゃかりき」のDVDも見てきた。自転車は風で体力を奪われる。

 「前半飛ばしちゃ駄目だよ」とガデンさんに言われてきた。飛ばしすぎないように、でも30kmを目標に。あれっ? 鉄人のユニフォームじゃない? 誰? あっ、対馬さん?ちょっと抜かしてみる。すぐに抜き返される。疲れないようにペースの同じ人についていこう。よし、この人だ!いい感じ。 あれっ? 対馬さん? 私、オーバーペースなんじゃない??かなり不安になる。また抜くが、抜かされる。抜き返されてホッとする。

 Z坂が終わった。ここから、体力を使わないように誰かにつこう。 あの人につこう。追いついた。ん??25km/hじゃ遅すぎ。じゃ、前にいるあの人。えっ、この人も遅いの? そうだよね。私が追いつくってことは、私のペースよりも遅いわけで、私を追い抜く人は速すぎてついけないし、なかなかつくことはできないんだね。楽はできないか・・・・両津:11:45 15分オーバー。上出来。さぁ小木の坂へ向かって頑張るぞ!!

 小木の坂。雛鶴の復路。ガデンさんに「宮ケ瀬まで、いやな坂が3つあるよ」と言われた。かなり嫌な坂だった。特に道志ダムから宮ケ瀬に戻る坂。あの坂だと思え。これを上らなきゃうちに帰れないと。えっちら、おっちら。いったいどこでこの坂は終わるんだ。ふぅ。あとはバイクゴールを目指すのみ。わぁ、15時過ぎたよ。1分でも早くバイク終わらせなきゃ。バイク190km:8:05

【RUN:42km】
 「今、何時ですか?」「15:35 だよ」よし、約6時間ゲット。ゆっくりでも走れば間に合う。あれっ、ごぼう抜き?意外に走れるじゃん、私。

 と、思ったのは5kmまで。5kmエイドからピタッと足が動かない。膝が少しと頭が痛い。歩こう。もうすぐ市役所。これじゃ去年よりひどいよ。あんなにみんな練習につきあってくれたのに。痛み止めにロキソニンまでNekoさんにもらったのに。いっぱい応援もしてもらってきたのに。なさけない・・・。ちくしょー。あっ生まれて初めて「ちくしょー」って使った。こういう時に使うんだ・・・・。とにかく、去年より悪い結果は出せない。去年より一歩でも前に進もう。時間の限り。歩いたり、歩いたり、走ったり、歩いたり・・・。

 神社だ。あれっ、ジョージ君。なんでこんなところにいるの!? 「水とコーラ(だったと思う)どちらがいいですか?」「OS-Oneがいい」ちょーわがままな私。「あー、ないんです。」「いい、いい。お水ちょうだい。」「いいペースですよ。対馬さんが9分ちょっと前に行きましたよ。」「(えっ?)今 何時?(17:23)でも歩いちゃったから・・・・」と走り出す。疲れているだろうにジョージ君にこんなところまで応援に来てもらい、走らないわけにはいかない。でも、・・・また歩く・・・・。ヨッシーさんに「おスギ、頑張れ」って声をかけてもらう。少し走る。また歩く。パナさんにも「まだ間に合う。最後まであきらめるな」って声をかけてもらう。でも歩いちゃったし・・・。対馬さんにも「追いついて来いっ」って声をかけてもらう。せめて、せめて17.7kmの公式記録はとり、去年より先に進もう。17.7km 18:00ぐらい。

 あと8kmで、25kmの公式記録がとれる。そこまで頑張ろう。8キロ1時間だ。あっ、ジョージ君。「OS-oneですよ。」なんで、なんで。どうしてOS-oneがあるの?その辺じゃ売ってないよね。この時間で取りに帰ったの??(ゴクゴク。本物だよ。)「ありがとう。」頭がよく働かなくてわからないけど、魔法だよ。

 あれっぇ。走れるじゃん。OS-oneが効いたんだ。魔法の水?? 27.5kmぐらいのエイド。「今、何時ですか?」「あと2時間半あるから大丈夫だよ」最後14.5km。残り時間2時間半。ゆっくりでも走れば完走できる。ここで歩いて、みんなの好意を無駄にしたくない。もちろん私の一年間も無駄にしたくない。とにかく走ろう。私の人生で、こんなに強く人の期待にこたえたいと思ったことはあったかな。初めてかもしれない。

 あー上りは無理。歩こう。上りきった、走るよ。あと3.8kmだったよね。走る、走る。歩く。一体何キロ走ったんだろう。「あと何キロですか?」「あと1キロぐらいだよ」と東北大学の学生さんが教えてくれる。学生の言うことなら間違いない。よし、あと1キロ。あーーーー、もうすぐゴールだ・・・。ゴール・・・・・・。15時間09分

 みんながいた。ありがとうございます。そして、ありがとうございました。

 佐渡Aは、私にとって初めてのトライアスロンの壁だったと思う。今まで自己流で、なんとなく、「なんちゃって」で完走できていた。でも、「なんちゃって」が通用しなかった。この壁を越えるために、多くの人に援助してもらい、越えることができた。みんなの援助が、パズルのように組み合わさり、起きた奇跡。大きな大きな佐渡のAの壁の前に、トランポリンをおいてもらい、両手を引っ張ってもらって、やっと越えることができた壁。一人では、絶対に越えられなかった壁。本当に皆様、ありがとうございました。もう二度と越えられないけど、一生の宝物です。

<後日談>
 記録をみて、えっ? ラン、5:34:23だったの!! 速いじゃん、私。いつも歩かないで、5:30なのに、あんなに歩いても変わらないってこと?31位だったんだ。去年、完走した40人の女性の一人になりたいって思っていたけど、31位と聞くと、30人以内(29位)になりたかった(と欲がでる)もう一年やれば、もしかしたら・・・・

 いやいや、ダメダメ。その誘いにはのらないよ。一人で、200km行けないでしょ。また早起きするの?もう少し、のんびりさせて頂きます・・・・(太らない程度に)

佐渡A:15:09:02 509位 女性31位/40人
(S)1:29:17 520位 (B)8:05:22 587位 (R)5:34:23 『380位!!』


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