2010-3-6アイアンマンニュージーランド2010参加記ハイジ

 大会は例年通り3月の第1土曜日です。3月末で今の勤め先を退社することになっていたので、残った有給休暇の消化の目的もあり、滞在期間約2週間という余裕の旅程を立てました。オークランドでの滞在先は、昨年もお世話になったKHさん宅(わたし達夫婦の仲人)。オークランドから車で4時間ほどのところにある大会会場の町タウポでは、昨年同様モーテルに滞在します。

 バイクを運ぶ箱も昨年と同様に大阪の「あさひ」のレンタルBoxです。2回目ともなるとパッキングもスムーズに進み、今年はウェア類もできる限りBoxに入れるようにして、手荷物を減らしました。成田まで運ぶのも昨年と同じXXXカウンターに頼みました。某大手航空会社があんなことになってしまったので、XXXカウンターみたいな、いかにも利益を出してなさそうな事業部門はとっととやめてしまうのではなかろうかと心配しましたが、まだ(?)大丈夫みたいです。ただ、昨年の料金が3000円ちょうどだったのに対して、今年は3450円に値上げされていました。多少の値上げはいいから、会社とサービスがなくならないことを祈ります。

 出発当日、成田で荷物をチェックインさせます。ここで昨年は経験しなかった問題がおきました。バイク関係は30キロまでは無料(普通は20キロ)というのは昨年と同じですが、今年は色々と詰めたので、30キロ以上ありそうでした。オーバー分は追加料金を払えばいいと思っていたのです。量ってみると、37キロありました。だいぶ払うのかなあと思っていると、そもそもひとつの荷物が32キロを越えてはいけないというルールがあるのでした。これは国際的に荷役に携わる人の腰などを保護するための協定なのだそうです。さて、他のお客さんの白い目を気にしながら、チェックインカウンターでバイクのBoxを開けて、中から5キロ分取り出して、別の荷物にしなければなりません。これに一汗かくことになりました。さて次は保安検査のX線です。バイクは規定以上の大きさなので、大型荷物専用のX線を通します。昨年は横に倒して、ぎりぎりで大型専用のX線の機械を通ったので、さすがに良く考えて作られたBoxだと感心したのですが、今年は横に倒しては駄目だと言われました(!)。横にしないと絶対に通りませんけど。。。検査官曰く、「箱を開けてくれれば、バイクは目視で検査します。バイク以外のものがあれば、はずしてX線の機械を通してください。」Boxを空けるのは簡単です。しかしバイク以外に、バイクシューズ、ヘルメット、エアポンプ、お土産、ランシューズ、ウェットスーツなどなどがガムテープや紐で、くくりつけられていて、考えてみりゃこれを固定させるのに昨日2−3時間格闘したのでした。これをまたバラバラにして、機械を通し、また固定させねばなりませんでした。これには参りました。この検査官の言っていることは本当に正しくて、バイクを持ち込む人はみんな同じことをやっているのでしょうか???疑問が残ります。

 やっとリラックスすることができます。早々に搭乗口まで行って、缶ビールを飲みながらぼんやりとしていました。大会が3月6日で、私が出発したのが2月28日でしたから、日本から参加する選手はまだいないだろうなあと思っていたら、隣に座ってきた若者は、どう見てもトライアスリートです。色は黒いし、ふくらはぎをしめつける何とかというハイソックスみたいのをはいているし。日本人はツアーで行く人が多いと聞いていましたが、この若者は一人で乗り込むようです。あとで堀陽子さんご夫婦のブログを見ていたら、この選手がM君で出てきました。
  トライアスリートNao&YokoのNZライフ
(このご夫婦のブログはすごく楽しいしためになります。もしIronman NZに興味のある方がいたら、このブログをチェックしてみてください。大会の様子が良く分かります。)

 さて、今年はオークランド直行便ですから、約10時間で到着です。日本の夕方に飛立ち、向こうの月曜朝9時ごろに到着です。時差はサマータイムなので4時間です。飛行機で寝られたのは2時間程度でしたが、現地での時差ぼけ解消のためにはこのほうが好都合です。昼寝をがまんして、夜早い時間に一気に爆睡する計画です。現地に着いたら、予約していたレンタカーを借ります。昨年はKHさんのセダンの後部座席をはずしてバイクを載せたのですが、今年はもっと大きな車が良いと思ったので、レンタカーを借りました。料金は12日間でNZ$830(日本円5万円くらい)でした。トヨタのワゴンでバイクは前輪をはずさなくても楽勝で載せられます。KHさんの家に無事に到着して、まずは自転車を組み、軽く練習です。家の近くの住宅街を7キロほどバイクで走りましたが、バイク用に路肩が広くとられていて、快適な練習でした。KHさんの家の近くの自転車屋でCO2カートリッジを買いました。今はネットでKHさんの町のどこに自転車屋があるか、日本で調べることができます。昼ごはんはソーメン、夜はラムチョップ。ビール数本、日本酒。8時過ぎには就寝、朝まで爆睡。

 翌日火曜は5時半起床(日本の午前1時半)。KHさんと朝練で近所をジョギングです(今年68歳の彼は現役レスリングコーチなのでトレーニングを欠かしません)。近くの公園を通り、海の入り江沿いの遊歩道を走ります。干潮なので浅瀬が広く露出していました。牡蠣やカラス貝のような貝がびっしりと岩にいて、いっせいに口を開けたり閉めたりするので、チャカポコチャカポコとすごい音が一帯にこだましています。不思議な光景です。午前中は食料の買出しに行きました。日本食料品店と韓国食料品店で、パン、レトルトご飯、レトルトカレー、ラーメンなどを仕入れます。午後はKHさんの家の近くでゴルフを9ホールだけ回りました。今回はバイクのBoxに、パター、サンドウェッジ、9番、ユーティリティの4本だけ入れて持ってきました。私にはこれで十分です。ただ残念なことに、最近悪化している50肩のせいで、テークバックで激痛が走りあまり楽しいゴルフではありませんでした。昼は韓国人の日本食レストランで刺身定食、夜は家で生ハム、パスタなど。ビール数本、白ワイン。

 翌水曜日は、一度は5時半に起きたものの、二度寝して7時半起床。バイク練習を10キロ程度、同じ住宅街を走りました。何人かバイクの練習をする年配の人に会いました。みんな道路工事で交通整理をする人が着ているような、黄色やオレンジの蛍光色のベストを着ていました。バイクにとって日本よりは格段に走りやすい道ですが、それでも安全に対する意識は高いようです。昼からまた懲りもせず、ゴルフです。今日は18ホールです。プレー代はただ。何故ただかというと、昨日の昼に行った日本食レストランの韓国人オーナーがゴルフコースの法人会員になっていて、その人たちが使わないときには、店のお客さんが借りて、ただでプレーすることができるのです。確かにメンバーフィーは固定費ですから、お客さんに貸してあげても、追加コストはかかりませんし、お客さんが喜んでくれて、レストランの固定客になってくれれば、なおいいわけです。さて、ゴルフは散々でしたが、最後の18番でいいショットが二発連続で打てて、気分良く終わりました。昼はKHさん手製冷麺、夜はゴルフの会員カードを返すついでに、そのレストランで日本食。途中から店のママさんも一緒に飲み始めて、ジョッキのビールに眞露を混ぜて飲まされたせいか、ずいぶん酔っ払ってしまいました。

 翌木曜日、今日は会場のタウポに移動する日です。朝起きてみると、左足首にくじいたような違和感があります。。。 なぜ? 思い当たるのは、昨日のゴルフの18番でいいショットを打ったとき。左にしっかりと体重が乗って、しかもジョギングシューズでやっていたので、支えきれず、ほんの少しひねったかな(?)という気はしていました。まずい、でも腫れていないし、大会まであと二日あるので、絶対大丈夫だと自分に暗示をかけて、出発です。約4時間弱のドライブの間、意識は常に左足首でした。タウポにつくとまず、スーパーでハム、チーズ、ワイン、ビールなどを調達します。その後会場に行き、ウェットスーツ消毒後に受付を済ませます。今年の宿は昨年より少しだけ会場に近いモーテルです。炊事設備があるので、大会前のカーボローディングは自炊です。昨年は、マック、ピザハット、バーガーキングなどが全てまずかったので、今年のホテルの条件の一番は自炊ができるところとしました。キングサイズのベッドルームとその倍はあるリビングルームで、一泊$NZ150くらい(1万円ぐらいか?)です。夜、改めてまだ痛みが引かない左足首を見ると、見覚えのある症状に変わっていました。少し赤みがかって腫れています。なーんだ、これ痛風の発作じゃん。はい、わたくし痛風持ちなんです、、、 そういえばNZに到着以来酒ばっかり飲んでいたし、生活リズムが違うので、毎朝飲まなければいけない痛風の薬も飲み忘れた日がありました。原因がわかればこちらのものです。この症状には病院で処方される消炎鎮痛剤がてきめんに効きます。この薬はそもそも痛風で処方してもらったのですが、50肩がもっと悪化したときに飲もうと思って持ってきていました、ラッキー!(ちなみにこの薬はドーピング検査に引っかかるそうですが、、、) 昼はレトルトカレー、夜はハム、チーズ、ごはん、さば缶。ビール、ワイン。

 翌金曜は4時起床。左足首の違和感はかなりなくなりました。午前中に選手説明会です。去年は日本人のためのブリーフィングに出たので、今年は一般向けのに出ました。プログラムを読む限り、昨年から変更点は全くなさそうなので、英語が分からなくてもいいでしょう。一通りの説明が行われ、選手からの質問はゼロ。しゃんしゃんで終わった感じです。朝はパン、蜂蜜、ハム。昼はラーメンなど、夜はごはんとうどん。酒は飲まない(今更、、、)。8時過ぎに就寝。数日間早起きして昼寝をがまんしてきたので、夜は早く寝れます。明かりを消したらすぐに寝ていました。

 土曜日。レース当日。3時半起床。左足首違和感なし。まず、去年のみ忘れたツリ防止の漢方を飲む。トイレも問題なし。食事はバナナ、パン、蜂蜜、オレンジジュースなど。会場までは約1キロの歩き。会場で漢方をもう1袋飲む。

 今年のスイムは、色々と考えねばならないことがありました。まず、寒さ対策です。昨年は寒さと疲労で途中で足がつりましたし、トランジションでは寒さで口も聞けないほどに凍えていました。今年対策として思いついたのは、サーファーがウェットの下に着るというインナーを着ることです。冬になってから、サーファー系が充実しているムラサキスポーツに行きました。色々と種類があり、ポケットがついていて水の中で使えるカイロが入れられるものもあります。考えた末、カタログの中で極寒使用と書かれた、一番厚手の生地で、カイロが入れられるものにしました。このカイロは繰り返し使える便利なものです。真冬の九十九里浜の北側の海岸でも大丈夫(!)と書いてあるので、水温15度ぐらいの湖なら楽勝でしょう。ただ、この厚手の生地はこれ自体に浮力がありそうなので、厳密に言うとルール違反かもしれません。もうひとつスイムで困ったことは、50肩です。もう一年ぐらい前から左肩に違和感があったのですが、年末ごろからかなり痛くなってきました。スイムの練習でもかなり痛いので、何とか痛まない泳ぎ方はないものか、色々と試したところ、肩関節自体は極力動かさないようにして、肩甲骨で腕を動かしたり、体全体をローリングさせたりすると、結構泳げることが分かりました。というかそれに気がつく以前よりも楽に泳げているような気がします。けがの功名?

 朝7時、曇り空の下でスタート。スタートは去年と同じく大砲の空砲です。足が着く、岸側をゆっくりとスタートします。今年のテーマはドラフティングに徹することと決めていましたので、すぐに誰かの後ろにつきます。女性かな?ペースはちょうど良いけど、結構方向を急激に変える人だな、前方確認をあまりしないのかな?少しこの人に着いていくことに不安を感じ始めたので、隣を追い越す人に乗り換えます。ということを繰り返しながら、楽に折り返しまで来ました。折り返しのドサクサで前の人を見失い、しばらく一人で泳いでいると、マーシャルから止められました。「コースが違うよ、お前は長方形の角をターンしてすぐ180度回ってしまっただろう、長方形の(短い辺の)二つ目の角も回らなければだめじゃん」みたいなことを言われ、自分が変なところを泳いでいることに気づきました。後戻りして、やり直しです。引いてくれる人を見つけてまたドラフティングを再開しました。帰りは流れが逆でしたが、前を泳ぐおじいさん(たぶん)のおかげで、楽に帰ってくることができました。普段のレースのときは片側オープンで、毎回息継ぎをするのですが、今回は3ストロークに1回の両サイドオープンで十分でした。スイムフィニッシュは1時間40分。コースミスで5分費やしたとして、まあこんなものでしょう。疲れずに終えられたので良しとします。インナーの効果はあったと思います。泳ぎながら寒いと思ったことはありませんでしたし、トランジションでも震えずに着替えることができました。

 バイク置き場に行くと、残っているバイクはほんの少しですが、でも去年よりは多いぞ(!)と自分を励ましながらスタートです。半袖バイクジャージにアームカバー、下は足首までのフルタイツです。トランジションで漢方1袋。補給はボトルにCCDとバックパックにカーボショッツの水割り15本分(1.5L)をしょっています。BentoBoxにはパワーバーを小さく切ってオブラートにつつんだものを詰めて、その上から塩タブを一袋ぶちまけておきました。バイクは新車です。Runで作ってもらったコルナーゴで、フロントタイヤは28ミリ、リアは25ミリのNZスペシャルです。DHバーは付けていません。風は昨年とは逆で、行きが追い風、帰りが向かい風です。天気予報では「Southeasterner、Sometimes Gusty」でした。南東の風が強く、ところによって突風ということのようです。帰りのことをあまり考えないようにして、追い風の中を楽しく最初の折り返しに来ました。このコースは45キロの2往復です。折り返すと、やはり向かい風がきついです。でもまだ体が元気なので、へたれずにスタートのタウポまで戻ってきました。太いタイヤの効果は絶大です。NZのガタガタ舗装がほとんど気になりません。ここまでのペースは目標よりも少しいいペースです。さて2往復目の湖の周辺の丘陵地帯の急な登り坂を上り終えて、さあこれからというときに、自分の体がかなり疲れていることに気がつきました。足はまだ大丈夫なのですが、上体が疲れて、ちゃんとポジションがとれません。それでも追い風ですから、何とか時速25キロくらいを目安にがんばります。でも最後の折り返しに着いたときは、完全にヘタレていました。それからはどんどん抜かれるばかりです。向かい風は午前中より強くなっています。それでも我慢していれば必ず終わりが来るし、去年制限時間に間に合うかどうかの瀬戸際で泣きそうになりながらこいでいたのに比べればずいぶんましだ、そう思いながらつらい時間が終わるのを待ちました。制限時間の35分前にフィニッシュ。予定では1時間前だったので、かなりガッカリです。

 それでも、もうバイクに乗らなくていいという幸せに浸りながら、トランジションを済ませ、ランのスタートです。昨年は18キロ地点までまあまあのペースで走り、そこからは35キロくらいまで歩き、そのあとは走りと歩きを交互に繰り返して、ランタイムは5時間59分でした。今年のランの目標は、最後まで歩かずに走る、です。最初の3キロくらいまで、1キロのラップをとりました。7分から7分30秒くらいで走れているようです。このペースで最後までいければ、昨年よりはいいランタイムが出ます。そのあとはラップを気にせず、ひたすら色んな事に気をまぎらせながら、歩かないことだけに集中しました。あとから考えると、これは失敗でした。どんどんペースが落ちているにもかかわらず、全くそのことに気づいていなかったのです。35キロを過ぎ、まだ歩かずに我慢して、前を歩いている夫婦と思しき二人組みを追います。こっちは走っているのだから、もうすぐ追いつくだろうと思ったのですが、行けども行けども追いつきません。そのとき初めて気がついたのです。俺の今のペースは歩きといっしょじゃないか? 38キロ地点から歩き始めました。競歩のようにしっかりと腕を振って、がんばって歩きます。すると前を行く二人組みとの差が徐々に縮まってきました。歩いたほうが速かった? これには参りました。最初からこのペースで歩いていたほうがよかったのか?? 来年への課題です。結局ランは6時間20分もかかることになります。陽が落ちてから気温が急に下がり、ウインドブレーカーを羽織っていましたが、これを脱いだら震えがきて、カメラに向かって笑顔でゴールする自信がありません。考えた結果、ゼッケンをシャツからはずして、手に持ってゴールすることにしました

 ゴール。自分の目標に遠く及ばなかった無念さと、完走の安堵感、昨年よりはましという自分へのなぐさめ、色々な思いとともにテントの中へ入って行きました。

 荷物を抱えて、ホテルまでの道を歩きます。自分以外は誰も歩いていません。疲労感は心地よく、できれば来年もまた出たい、もうひとつ階段を上りたい、そう思いながらホテルまでの道を歩きました。この晩はめずらしくアルコールを飲まずにシャワーを浴びてすぐに寝ました。

 翌日はさほどの疲れもなく目覚めました。前日にまともな食事をしていないので、何かしっかりと食べたい気分です。部屋ごとにある小さな庭に、バーベキューの施設がついているので、そこで一人バーベキューをすることにしました。ラムチョップとビーフのステーキ用の肉を買ってきて、ビール、ワインで乾杯です。とても食べきれまいという量を買ってきたのですが、簡単に平らげました。堀さん夫妻のブログで読んだのですが、大会のあとに選手に何が食べたいかと聞くと、ほとんどの人が、肉!と答えるそうです。レース後の本当に幸せな時間です。夕方はアワードパーティーです。カーボローディングの方は行ってないので分かりませんが、アワードパーティーは昨年と比べて大分質素になっていました。料理の品数は昨年の半分。昨年は各テーブル全ての席に、スパークリングワイン、ビール、白赤ワイン、各自持ち帰るためのアイアンマンロゴ入りシャンペングラスが用意されていましたが、今年はスパークリングワインなし、テーブルごとに白か赤どちらか、シャンペングラスなし、でした。そういえば私のゼッケン番号も昨年より100番以上若かったのですが、参加者が少なかったのでしょうか?

 昨年も強く感じたことですが、海外でアイアンマンレースに出場するなどということは、本当にさまざまなことに恵まれないと、到底かなうことではありません。「おかげさまで」という気持ちを忘れずに、また次の1年をトライアスロンとともに、自分らしくしっかりと生きたいと思います。本当にありがとうございました。


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