2009-11-23大田原マラソン完走記
「3時間の内側の住人になるべく、重い扉をこじ開ける記」
ツカ

☆3時間の向こう側
 50歳を機会に7年振りのフルマラソン挑戦。7年前も同じ大田原でサブスリーを達成したが、今もサブスリーを達成する自信なんてまるで無し。ましてや加齢と共に落ちる実力。しかし、挑戦する以上はサブスリーを目指す。モトさんがここ数年50歳サブスリーに挑戦してもなかなか達成出来ない事に触発された部分も有る。
 目指す以上はそれなりの練習が必要な事は十分承知の上。ロングジョグは当たり前。しかし、このままジョグだけの練習では限界が有るのではないかと感じる様になる。3時間の扉をこじ開けて向こう側に入って見せるぞ!

☆「ヤッソ800」
 そんな時に出会った練習が「ヤッソ800」なるインターバル練習。これはフルマラソンの目標タイムから割り出した設定タイムで800メートルを走る方法。
 例えばフルマラソンの目標が3時間なら800メートルを3分で走り、つなぎを同じ3分で400メートルを走る。これを1セットとして、10セット出来れば限りなく3時間で走れると言う法則。無論この法則になんの補償もないのは百も承知。しかし、目先の練習方法に変化が必要なので、信じて練習を重ねる。   

 800メートルを目標タイムで走るには正確な距離が分かる場所で無ければならない。即ち400メートルトラックが必要で有る。一般人でも使えるトラックを探して見たら、月に3回くらいの一般開放日の有る三ツ沢陸上競技場が有った。勿論平日。平日の誰も居ない400メートルトラックを50のオヤジがひとり腕時計のタイムとにらめっこしながら、ゼイゼイハーハーと走る。初日は3分で回して見た。出来た。次の回は2分55秒で回して見た。出来た。

 トラックが使え無い日も路上「ヤッソ800」をやった。距離が分からないから、腕時計のタイマーを3分にセットして、3分ダッシュと3分スロージョグの繰り返し。ひたすらタイマーの3分終了タイムのチャイムを聞くことの繰り返し。

 大田原2週間前の最後の「ヤッソ800」は2分45秒で10本出来た。これは2時間45分で走れるって事?それは無いだろう!10月1日から45日連続で走り続けた、勿論雨の日も。やる事はやった。

☆イーブンペース設定。
 3時間の扉の内側の住人になるべくギリギリでの目標設定をする。5キロを21分で刻んで行こう。無理は禁物。オーバーペースは最後に付けが回って来る事は何回も経験済み。
 スタート位地に失敗して、集団に埋もれてしまう。マツさんや屁のカッパさんの後ろで競技場を出て行く。集団を掻き分け前に出て行った2キロ地点くらいで有ったろうか?モトさん発見。前半はこの人に付いて行けば5キロ21分の正確なペースを刻んでくれるのであろうと思い付いて行く。

☆5キロ地点
 最初の5キロは21分13秒。オーバー13秒。スタートの混雑を考えればいいペース。気温も暖かく、風もそれ程ではなく、コンディションは最高。

☆10キロ地点
 次の5キロは20分44秒。プラス貯金16秒。10キロ41分57秒。プラス貯金3秒で帳尻が合った。10キロのスペシャルドリンクを摂る。ジェルとメダリスト(クエン酸)200cc。

☆15キロ地点
 次の5キロは21分19秒。15キロ1時間03分16秒。オーバー16秒。この辺りでモトさんの前で走るようになったが、息づかいや気配が感じられなくなって来た。兎に角自分との戦い。自分の身体を3時間の扉の向こう側へ持って行く事だけに集中する。まだ余裕。

☆20キロ地点
 次の5キロは21分16秒。20キロ1時間24分33秒。オーバー33秒。2回連続で10秒以上のオーバー。これはやばい。ペースアップする。しかし20キロのスペシャルで大失態。スペシャルを取り損ねる。ゼネラルエードでスポーツドリンクのみになる。正確なペースと正確な補給を考えていたのにこれは痛い。若い時は何の補給もせずにあっさり走れたが、この歳になったら丸腰で走るのは自殺行為。気を取り直して25キロのスペシャルを楽しみにして走る。

☆ハーフ地点
 1時間28分58秒。サブスリーまでの猶予2分。後半のペースダウンを考えると猶予2分は非現実的。同じペースであと21キロ走れる自信無し。いよいよ疲労が忍び寄って来る。

☆25キロ地点
 何とかペースアップしたお陰でこの5キロを20分05秒。25キロ1時間44分38秒。プラス貯金に転ずる。じゅんくの黄色いウエアーはなかなか見えない。彼もサブスリーを目指しているので飛ばしているはず。そんな事を思っていたこの辺りだろうか?路肩で座り込んでストレッチをしているじゅんくが居た。「どうした?」「脚攣った!」前半のオーバーペースの精算をしている所で有ったようだ。こんどこそは間違え無くスペシャルドリンクを取る。内容は、ベスパとジェルと水。

☆30キロ地点
 いよいよマラソンの壁地点。この5キロも20分37秒とプラス貯金精算。本格的な壁は来ていないが、いよいよきつくなって来た。スペシャルは脱水対策用のOS-1とジェル。32キロくらいで明らかなペースダウンを感じる。壁だ!歩幅が小さくなって来た。脚も上がらなくなって来た。もう一度何とかせねばと思いギヤチェンジを試みる。

☆35キロ地点
 自分に気付いていないキヨさん発見。こちらから声をかける余裕無し。この5キロ21分44秒。大幅なオーバーで35キロ2時間27分丁度。プラマイ0。踏ん張り所のスペシャルはドロドロのグリコCCDとジェル。たっぷりとエネルギー補給。壁は続いている。腕を大きく振って、上体で脚を前へ持って行く。

☆40キロ地点
 前に出ない脚を気力で前に運ぶ。この5キロもオーバー精算。21分31秒。あと2、195キロ。40キロ2時間49分32秒。残り10分28秒。40キロ前後で脚が攣り出した。思うように脚が動かない。思うように動かないと言うよりは、勝手な動きになる。痛みで走り方がバラバラで転びそうになる。最後のスペシャルはジェルとコーラ。コーラは上手く喉を通らず殆どを吐き出してしまう。残りをキロ5分未満で行かなければ目標は達成出来ない。本格的に限界が来ている感じだ。背中に「限界からの勝負」って書かれたTシャツを着た奴が前を走っていたが、まさに今がその時。

 あと2キロの看板。残り10分。キロ5分なんて無理だ。だけどフィニッシュタイムが3時間01秒とか悔やんでも悔やみ切れないタイムとかは絶対避けたい。最後の最後までサブスリーの可能性を持ったまま走って来たのに、ここで切れる訳には行かない。

 あと1キロの看板。残り5分。とてつもなく長い1キロに感じた。何と長い1キロだろう。夢の中で走っている感じだ。走っても走っても前に進まないあの感じ。

☆思いが結実する瞬間
 競技場が見えて来た。このコースは競技場に入って直ぐゴール。競技場の時計は2時間58分を回ろうとしている。猛ダッシュ。競技場に入って2時間59分丁度。そこから数十メートル。フィニッシュタイム2時間59分11秒でゴール!思いが結実した瞬間。「ヤッター!」心で叫ぶ。涙がチョチョ切れる感じです。

 ゴール直後歩行困難になったのは言うまでも有りません(笑)。

☆最後に。
 久々のフルマラソンを走るに当たって、練習以外の部分で色々参考にさせて頂きました。モトさんとタケ1号さんの大田原完走記(考察記)。その他色々な人のマラソンに関するブログ等々を読みました。そんな中で心に強烈に残った言葉が、「何が何でもサブスリーを達成するんだ!と言う諦めない信念」と言う言葉。この言葉が最後の2キロでの力になったのは間違い有りません。


 スタート   5q   10q   15q   20q   25q   30q   35q   40q  ゴール
 (LAP) 21,13  20,44   21,19   21,16   20,05   20,37   21,44   22,31  9:39
 (SPLIT) 21,13  41,57 1:03,16  1:24,33  1:44,38  2:05,16  2:27,00  2:49,32  2:59,11
                     前半ハーフ                   後半ハーフ
                     1:28,58                    1:30,13

 長文お付き合いありがとうございました。(ツカ)


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