2008-5-1 トレイルランは暗夜行路と草枕 キヨ

 箱根はすべて山の中である。そして、山道を登りながら考えた。走り出せばぬかるみだ。歩いて行くには遠すぎる。一休みしようと思えば店員から睨まれる。兎角に雨の箱根は走りにくい、などと。

 5月5日、子どもの日。天気予報では午後から雨。それでも、総勢11名の善男乙女が集合し、箱根湯本駅前から仙石まで、バスで移動。そして乙女峠の登り口までアップ替りのウォーキング。途中の金時神社では、端午の節句の行事が行われるようで、子供づれが多い。打ち上げ花火の音も威勢がいい。登り口から乙女峠までは約1キロの急坂。「最初からとばすことはないよ。上に行けばいくらでも走るところがあるから。」とのマツのアドバイスを受け、ゆっくり登って行く。そして最初の到達地の峠で、乙女3人が看板の前で記念写真。天気さえ良ければ富士山が正面に望めるのだが。ここで最後のコース説明をうけ、それぞれのペースで走り、歩き始める。アップダウンを繰り返しながら芦ノ湖外輪山の西側を尾根伝いに南下する凡そ20キロ、約5時間の行程の始まりだ。ショートカットできるコースはなく、「疲れたら遊覧船で帰る。」と言う乙女に対し、「芦ノ湖を泳いで帰れ。」とは善男の共通した指令。

 1時間ほど行った所で、反対から来たハイカーに「今がチャンスだよ。」と声を掛けられた。指差す方を見ると、雲の切れ間から芦ノ湖とその北岸のゴルフコースが見下ろせる。後になってみれば今回唯一の良い景色だった。そこから先は、雲の中に入り、霧雨状態の中を進む。先行は、マツ、イチロウ、助、カンレキ、石島夫人。間にキヨ、港のヨーコ・・・長っの二人、アンカーは隊長、おスギ、ウエノ、ガサ。2時間ほど経った辺りで、本格的な雨になって来た。まだ半分も来ていない。時折、トレイルランをしている人達(外国人の方も何人かいた)と擦れ違う程度で、ぬかるんだ山道を進み続ける。散った桜の花びらも雨に濡れ落ちている。出だしの頃は長閑に聞こえていた鶯のさえずりも心なしか、か細く感じられる。ところどころにある休憩所にも人影は見えない。何箇所かあった分かれ道では地図と、恐らくマツのものと思われるトレイルシューズの跡が頼り。天気さえ良ければ、景色もさることながら、尾根伝いで比較的平坦な草の道もあり、爽快に走れるのだろうな。道端のタンポポの黄色だけが鮮やかだ。

 3時間弱で、三国山に到達。ここでカンレキ、石島夫人、助と合流し、前後しながら進んで行く。その先、山伏峠では、正に修行僧の気分。♪何故、何を目指して、君は行くのか〜♪。ランや景色を楽しむどころではない。ぬかるみも激しくなり、上りよりも下りの方が足元は覚束ない。途中、芦ノ湖スカイラインと接する所にレストハウスがあり、店先の自販機で温かい紅茶を買い、入り口で身体を休めていたら、中から店員にすごい形相で睨まれたので、早々に退散。次の目標地点の道の駅を目指す。事前の説明で、道の駅を目印に一般道路に出てから箱根旧道への道順を聞いていたが、雨が降っていたため一般道路を走っていこうか、とも思いつつ道路に出た。しかし、一般道路も交通量が少なくなく、雨水の流れで滑りそうだったため、旧道を行くことにする。旧道への入り口を探すのに少し手間取ったが、「箱根」への標識を頼りに石畳を下って行く。スタートして4時間を経っていないが、地図を見る限り、残りは数キロ。今日のお楽しみは、ビールより熱燗だ。

 ところが、石畳は、平らに敷き詰められているわけではなく、サッカーボール2,3個分の丸い石が埋められた急坂なので、よほど気をつけないと足を滑らせてしまいそうだ。途中、一般道路の下を潜り、石畳が途切れたところで箱根駅伝往路ゴール地点を目指す。霧と雨で、ゴール地点を見誤り行き過ぎてしまったり、戻って港のヨーコ・・・とゴール記念碑前で写真を撮ったりしている間に、何人かは先にバスで湯本へ戻って行った。
 二人で後続のバスに乗り込んで発車を待っていると、「隊長にそそのかされた」とぼやくメンバーを含めたアンカーグループも無事、到着。走行時間4時間20分の苦行を終え、別ルートを辿るVo2Maxの二人も合流する、かっぱ天国への宴会へと突入した。



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