2007/10/14 10年ぶりの100キロ、第13回四万十川ウルトラマラソン完走記 Mr.ビーン

11月14日、3:30
スタートまで(タイムは自己計時)
 民宿を出ると雨粒がポツリと落ちてきた。傘をさすほどでもないので、そのまま車に乗込む。四万十市中村の街はずれにある民宿から、スタート地点までは5キロほどあるので、車で送ってくれるのである。時刻は3時半である。15分ほど走ると暗闇の中に明るく電灯をともした建物が見えてきた。ここが100キロのスタート地点の蕨岡中学校だ。下はスパッツだけなので、ちょっと寒い。体育館に入って場所を確保し、ストレッチをしてスタートを待つ。
 先週の天気予報では「曇り/晴れ」だったのが次第に悪いほうに変わり、昨日の時点で「午後から雨」、さらに「朝から雨」に変わったらしい。周囲の話を聞いていると確率80%だという。別の話では午後から回復するという人もいる。いずれにせよ雨の降ることを予想してビニール袋を2枚用意している。
 トランジッションバッグは2つあって、ピンクの紐は62キロ地点、黄色の紐はゴール行きである。ピンクのほうに着替えのシャツとランシャツ、ソックス、ビニールを1枚、カーボショッツとパワーバーを入れる。もう1枚のビニールはスパッツの背中に挟んでいく。

5時30分 スタート
 いよいよ100キロのスタートだ。まだ暗い闇の中にアーチがライトで照らし出されている。タイメックスを押してゆっくりとスタート。ラインを越えるのに1分ほど。幅5メートルほどの土手の道は100mくらいの間隔で停めてある車のヘッドライトで照らされている。周囲のランナーが次第にばらけていき、それにつれてペースは速まっていく。意外に速い。自分はキロ7分ペースを想定しているのだが、集団はこれだと6分45秒くらいだろう。道路の左端をキープしてどんどん追い抜かせていく。
 ウルトラマラソンはこれで5回目である。94年から97年まで4回秋田100キロに出たのだが、完走できたのは95年と96年だけ。しかも13時間の制限内は96年の1回だけだ。四万十は制限時間が14時間だが、コースは秋田より厳しく、21キロ地点に標高600メートルの峠がある。想像では、例えば国府津のあたりからスタートして小田原を経て、箱根湯本から本格的な登りに入り、大平台、宮ノ下を経て小涌園を過ぎたあたりまで登る。峠までは大体こんな感じではなかろうか。

5キロ 0:35:52
 5キロを過ぎ、ようやく明るくなってくる。コースの右側は山で道幅は5mほど、2%くらいの上り坂である。ところどころにボランティアの車が駐車してヘッドライトで照らしている。民家もまばらだが、家のあるところでは人々が応援に出ている。相変らずどんどん追い抜かれている。皆こんなペースで完走するのだろうかと心配になる。

10キロ 1:10:29 (34:37/5km)
 コースは次第に山の中に入っていき、少しずつ上り勾配になっていく。4〜5%くらいか。路面は雨と側溝の水で濡れている。舗装道路なのだが、路面の真ん中あたりには苔が生えているし、わだちの部分は非常に滑りやすいので危険である。側溝から飛び出したものか道路の上にウナギが跳ねていたりする。ミミズもときどき横たわっているが、これもウナギくらい巨大である。

15キロ 1:44:24 (33:55/5km)
 15キロを過ぎると本格的な登りが始まる。ここから21キロ地点、標高630mまで、8〜9%くらいの登りとなる。感覚としてはメルヘンコースか半原越えみたいだが、あんなに開けた感じではなく、もう少し山も木もうっそうと暗い感じである。スタートしてからかなりのランナーに追い越されたはずだが、周囲はまだ密集した集団となっている。雨は時おりぱらつくだけで、ビニールを着る必要はない。
 急な登りが頂上に近づくにつれて次第に歩く人も多くなってくる。やがてなんの音だろうか、ピロピロと鳥にしては変だなと思っていると、ここが20キロ地点のチェックポイントなのであった。しばらく行くとエイドがあって、ここでようやく頂上である。

20キロ 2:21:58 (37:34/5km)
 この大会はサポートも充実していて、給水は2.5キロごと、軽食が5キロごと、さらに各種食べものを取り揃えたエイドが20キロごとにある。給水ポイントでもバナナくらいは置いてある。かつて秋田100キロでは給水ポイントには大きなポリバケツが置いてあるだけで、柄杓で勝手に飲むだけだったな、などと思い出す。ここのエイドでカステラ、アンパン、おにぎり、バナナ、とひと通り食べる。どうせ後半では食べられなくなるから、食べられるうちに食べておく。
 ここから30キロまではずっと急な下りが続く。たぶん500mくらいの標高差である。スピードを出し過ぎないように下っていくが、足には結構厳しい。先ほどから軽トラックのテレビ中継車を何回も追い越しては抜かれている。ちょうど自分が行くと機材を片付けており、しばらくすると後ろから抜いてゆく。もっと先頭集団を写しているのである。先ほどの上りもそうだったが、この下りも延々と同じくらいの傾斜が続く。

30キロ 3:28:44 (1:06:46/10km)
 30キロを過ぎると下り坂もようやく平坦に近くなってくる。32キロからは四万十川が右手に見え、川沿いにほぼフラットなコースとなる。下りに入ってからは抜かれることもなく、ほぼ周囲のランナーも一定している。10mの間に2〜3人が走っているような間隔である。
 四万十川は全長200キロ近い大河であるが、落差が小さいため幅が広く、ゆったりとした流れである。はるかに対岸を見ると、右岸には国道があり車も走っているが、マラソンコースはほとんど左岸に沿った5m幅の細い道で交通量も少ない。
 給水ポイントは多すぎるくらいだが、なるべく立ち止まらないように、CCDと水をひと口ずつ飲むようにしている。今回初めてアスリートソルトを小袋に入れて、スパッツのポケットに入れているのだが、取り出すのが面倒なので、なるべく給水ポイントで梅干をとるようにしている。

40キロ 4:37:13 (1:08:29/10km)
 ここでトイレ休憩。コースわきにはところどころコスモスが咲いていてきれいである。気温も20度を越したくらいか、背中に挟んだビニールが汗で濡れて気持ち悪いので、ここで捨てていく。もう雨は降らないだろう。しばらく行くと、4000番台のゼッケンをつけた60キロタイプの選手を追い抜き始める。多分、7分ほどスタートで先行しているだけなのだが、いくらなんでも今からペースダウンしていては、これから先が大変だろうと思う。

50キロ 5:47:02 (1:09:49/10km)
 50キロ過ぎに沈下橋があり、ここを渡って戻る折り返しになっている。ここから2つ目の上りがある。標高差は100mほど、距離は1キロちょっとなのだが結構きつい。途中からほとんどのランナーが歩き始める。エイド以外ノンウオークで行きたいので、ここもとりあえず走る。先ほどからずっと前後している60代の小柄なランナーがおり、この人をマークしつつ走る。ペースはここまでは7分/kmで変わらないのだが、前半の峠越えのダメージが結構あり、このペースでもけっして楽ではない。

60キロ 7:01:31 (1:14:29/10km)
 コースはいったん広い国道側に出て、ここから橋を渡って左岸に戻る。ここにカヌー館というレジャー施設があって、ここがレストステーションになっている。気温も上がりウエアは濡れているが、普通なら着替えずに済ませるくらい。しかし先ほどからゼッケンが破れているのがかなり気になっており、そのため着替えることにする。スタートでは気温が寒いことを予想して、後半は半袖の上にランシャツを着ようと思っていたので、新しいゼッケンはランシャツに付けてある。これを外して半袖に付けかえ、着替えを済ませる。芝生の上に座っていると、ついのんびりしてしまい、腰を上げると18分もたっていた。ここでもおにぎりと梅干、クリームパン、アンパンなどを食べる。紙コップに入った味噌汁が大変うまくて3杯もお代わりをする。しばらく休むと走り始めるのがつらい。気合を入れて一歩を踏み出す。残り40キロ。気になっている右足も大丈夫なようで、完走に不安はないがまだ先は長い。
 今年、100キロに出ようと思い立ったのは春先のことである。続けて出ていた五島のアイアンマンにも出られず、今年のロングは佐渡だけ。久しぶりにウルトラでも、と思い四万十に申し込んでみたのだが、どうやらこの大会は人気があるようで、事前に抽選がある。まあ初めてでは当らないか、と思っていたのだが、5月の中ごろになって当選の通知が来た。この頃、タイミングが悪いことに足を故障して、3週間ほど練習がまったく出来ていなかった。練習量も例年の半分くらいで若干の不安があったのだが、まだ期間もあるし、と申し込むことにした。ついでに、糸魚川、湘南ラフウオータースイムと合わせてトライアスロンになるし、などとも思った。

65キロ 7:53:59 (0:52:28/5km・休憩18分を含む)
 この大会の制限時間は14時間であるが、途中にも数ヵ所に関門が設定されている。ここまでは1時間40分ほどの余裕でクリアしている。距離表示も1キロごとにあって、たいへん親切なのである。しかも200〜300mおきくらいの短い間隔でボランティアが配置されている。

70キロ 8:28:19 (0:34:20/5km)
 ウルトラは70キロからがつらくなる。初めて出た94年の秋田では72キロでリタイヤ。95年はかろうじてゴールには達したものの制限時間には間に合わず、96年はようやく時間内完走を果たしたが、いずれも70キロからはラップタイムが大幅に遅くなっている。最後に出た96年はお腹の具合が悪くなって、確か50キロにも達せずにリタイヤしたのであった。
 今回は天候のコンディションが良いこともあって、過去のウルトラよりもはるかに楽である。
 昨晩、同宿の選手たちの話ではここ数年好天が続いているそうで、給水と暑さ対策がポイントだったとのこと。しかし日没後は急速に寒くなるから、歩き出したら大変とのことであった。

75キロ 9:08:37 (0:40:18/5km)
 この区間でいきなりペースダウン。コースはなだらかな上り下りが続いている。特に足に来たわけではないのだが、走行ペースが若干落ちているのとエイドで休む時間が確実に長くなっている。

80キロ 9:49:39 (0:41:02/5km)
 この大会では有名なのだそうだが、80キロ地点の私設エイドにはビールがおいてあるという。量はほんの少しなのだろうが、「うまい」などといって飲んでいる人を見かけたので本当らしい。しかも鯖やサンマの棒寿司などもある。缶詰のパイナップルもある。おにぎりもパンももうあまり食べたくないのでこれは有難い。寿司とパイナップルをたくさん頂く。

85キロ 10:27:47 (0:38:08/km)
 すでに夕方の4時になろうとしている。今回の目標はとりあえず完走であるが、昨日、同宿の名古屋の青年に目標タイムを聞かれて、12時間30分と答えておいた。多分それくらいならいけるだろう、できれば12時間が切れればいいが、と思っていた。しかしここでキロ6分ペースに戻さなければ12時間は不可能である。何とか12時間30分を切ろう、とタイムを意識し始める。

90キロ 11:05:58  (0:38:11/km)
 走るペースを上げることは出来ないので、とりあえずエイドで休まないようにする。これが一番効果的である。食欲がなくなってくると、エイドで何か食べられるものはないかと迷い始める。これが一番いけない。もうなにも食べなくて大丈夫だから、とにかくチョコレート、飴か氷砂糖をつかんで走り出すようにする。

95キロ 11:45:10  (0:39:12/km)
 まだ空は明るいのだが、夕暮れの気配が漂いはじめる。コースは四万十川から左に折れてゴールの中村高校へ向かっていく。このコースでは、はっきりとした上り坂は3ヵ所だけなのだが、その最後の坂が98キロ付近にある。標高差は50mほどである。ようやく住宅街のはずれに入り、人々が応援を送ってくれる。子供たちとタッチしながら坂を上る。下り始めてすぐに自分が泊まっている民宿がある。前を通るときに写真を撮るから声を掛けてくれとおかみさんにいわれていたのだがそんな余裕はない。坂の下のほうに明るく輝いているゴールが見えてきた。何とか12時間30分は切れそうである。

100キロ 12:25:41  (0:40:31/km)
 坂をほぼ下りきったところに大きなかがり火がたいてあり、ここを右へ折れて高校のグランドへ入る。前後のランナーは20mくらい、いつものグリコになってゴール。
 タオルとメダルをかけてもらい、アイシングの氷をもらう。とりあえず腰掛けて念入りにアイシングする。ようやく終わった、ただそれだけである。
 しばらくすると途中からマークしていたIさんがゴールしてきた。マークしていたのは、あともう一人、ゼッケンからすると20代女子だが、80キロで完全に後ろへ置いてきたつもりだったが、リザルトを見たら何と自分より5分も早くゴールしていた。

第13回四万十川ウルトラマラソン
2007年10月14日
No.2054 一般男子418位(完走875名)

 Point   Lap   Split
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スタート  0:53   0:53
 20km  2:20:57  2:21:50
 40km  2:15:21  4:37:10
 60km  2:24:17  7:01:26
 80km  2:48:02  9:49:28
100km  0:40:31 12:25:41


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