アイアンマン・フロリダ マツ

 2003年のトライアスロンシーズンが終了し、鉄人たちがみなランナーになって走り込みをしている9月、10月、私はひたすらバイクに乗りつづけアイアンマンフロリダに備えました。と書き出したいところでしたが、今回も例によって仕事に追われ予定の半分ほどの練習量でレースに臨むことになりました。今年はとにかく仕事が忙しくなかなか練習時間がとれませんでした。アイアンマンレースに参加できるのも仕事があってのことですからこれは仕方のないことですが。今年出ることができるアイアンマンレースは日程的に唯一このフロリダだけでした。仕事の方は10月いっぱいで一段落し、休暇を取ることは問題なかったのですが、体力的には厳しいものとなりました。この程度の練習量ですから目標は完走、そして、前年のウイスコンシンのタイム14時間42分は破るという低いものにしました。アイアンマンフロリダの日本人参加者は18人、ツアー参加者は16人、(選手15人、応援1人)11月5日14:00に成田に集合し、デルタ航空でアトランタへ向かいました。アトランタまでは12時間、とても長いフライトです。アトランタで国内便に乗り換えてフロリダ州の西のはずれパナマシティーには18:30に着きました。外はすでに暗くちょっと蒸し暑く感じました。空港からは20分ほどで会場近くのコンドミニアムに着きました。日本チームは3つのコンドミニアムに分かれて泊まりました。私の宿泊先は「サンバード」、会場へもスーパーのウォールマートへも近くて便利なところでした。同室は名古屋から参加の早川さん、今回が1stアイアンマンです。部屋は2LDK、ベッドルームには大きなダブルベッドがあり、リビングにはソファーベッドがセットできます。キッチンには食器はもちろん大型冷蔵庫、レンジ、オーブンと何でもそろっていました。近くにはレストランはエバーグリーンという中華レストランが1件あるだけでしたので、ほとんどが自炊でした。いや自炊というよりウォールマートで買ってきたものを食べていました。

 私たちの部屋は8階のオーシャンビューの部屋でした。白い砂浜が見渡す限り西へも東へも続いていました。到着翌朝、本来ならば泳ぎに行くべきところですが、気が乗らなかったので、窓から海を眺めていました。5〜600メートル先のスイム会場では沖に向かって泳ぐ人の長いラインが見えていました。ビーチを散歩している人も見えます。それにしても長くきれいな砂浜です。広く大きな海です。このまま海を眺めてのんびり何にもしないで1ヶ月くらい過ごしてみたいものです。現実はのんびりしている場合ではありません。9時にはバイクが届きました。バイクはアトランタからトラックで直送されて来ました。バイクの組み立て、レジストレーション、アイアンマングッズの買い物、頼まれたメラトニンも探さなくてはいけないし、5時からはパーティーとやることはたくさんありました。

 さてレースの話です。レース当日は3時半に起床、日本から持参した赤飯と即席味噌汁、パン、シリアルの朝食をとり、5時に会場へ向かいました。少し風があり気になります。ゼッケンを両腕、両脚に書いてもらいました。脚の後ろには年齢が書かれました。バイクに空気を入れボトルとパワーバー、グーをセットしました。ランのスペシャルニーズには念のため寒さ対策のTシャツを入れました。これで準備万端です。トランジットエリアはボードウオークというコンベンションセンターのジュータン敷きの会議室でした。トランジットエリアに入り込んでストレッチをしながらスタートを待ちました。6時半ビーチへ移動、少し泳いで見ました。ビーチには2000人のアイアンマンたちがスタートを待っています。プロは前方の水中から、エイジは全員ビーチからのスタートです。7時スタート。バトルを繰り返しながら前へ進みました。ブイの数が日本の大会ほど多くなくブイの間にはロープもないので方向性が良くわからないままに進んでいきました。スイムコースは約900メートル沖へ進み直角に曲がり100メートルほど泳ぎ曲がって岸へ戻ってくる左回りの2周回コース。コーナーではすごい混雑でしたが戻ってくる頃にはバトルも納まりました。一度ビーチに上がりゲートをくぐり給水して2周目に入りました。腕時計はバトルで止まっていたのでもう一度押し直しました。会場の時計を見たら43分でした。ちょっと遅いですがまずまずの滑り出しです。2周目はバトルもないのでタイムは上がるだろうと思いながら泳ぎ始めましたが、しばらく泳ぐと今度は波が出てきました。目標のブイが見えないほどです。それでも何とかコーナーまでいくと次ぎはうねりにおそわれ、四苦八苦しながら泳いで2周目が終わりました。何と2周目は50分かかりました。そしてトランジットでものんびりしていたら12分かかっていました。周りにはバイクはほとんどなく、ポツンと残ったバイクを取ってバイクの始まりです。

 太陽が出てきたので暑さを予想しましたが、空気が冷たく気持ち良かったです。しばらくビーチに沿ってレストランやホテルが並ぶフロントビーチロードを走ります。いかにもフロリダらしい景色でした。10キロほどすると右折して海とはお別れ、平らでまっすぐな道路が続きます。周辺は林、唯一のアップダウンはウエストベイを超える陸橋だけでした。向い風が気になります。時速30キロが出ません。練習していればガンガン行ける程度の向い風だとは思いましたが、今の自分にとってはきついものでした。往復コースではありませんから、いずれ追い風もあるだろうと期待しひたすら脚を回しました。後で5マイル毎のラップを見たら16分を切っていたのは、50〜60マイルの2回だけでした。ラップをすべて取ったわけではありませんが、情けないことでした。後半はたぶん追い風も吹いていたと思われますが、練習不足のつけで尻が痛く座っているのが苦痛になってきました。悪いことに後半はひび割れがたくさんある悪路が多くて最悪でした。平地なのにときどき立ちこぎしたりして気をそらし進みました。コース途中には牧場やきれいな景色の湖畔がありました。途中に街と言えるようなところはなかったと思いますが、時々目に入る民家は広い敷地に平屋の家、フロントヤード、バックヤードと呼ぶにふさわしい広い庭があり、ガレージは別棟、塀はなし。とってもアメリカンな田舎らしい風景でした。6:38:52でバイク終了。

 ランのスタートは3時半、まだ日差しは強く、日焼け止めをたっぷり塗ってもらってスタートしました。ランコースはハーフの折り返しコースを2周回します。バイクとは反対方向にサーフドライブを走り、途中から住宅街のラグーンドライブを走ります。木陰があって気分良く走れました。ランコースには5キロ毎のキロ表示がありました。5キロ29:02、10キロ32:49とこの辺までは順調でしたが、太陽を気にしていられたのも、順調なペースで走っていられたのもたったの1時間と少しのことでした。5時には日は沈み、あたりは真っ暗になり、ペースも落ちました。実は走っている時はそれほど遅いとは感じていませんでした。とにかく走っていましたから、周りの選手と言えば元気の良い選手はおそらく2周目の選手で、1周目と思われる選手はほとんど歩いていました。ですからゆっくりでも走っている限りは、抜いてばかりという状況でした。時間がかかった要因は1マイル毎にあったエイドの多さにあると思います。エイドでは毎回立ち止まり、歩きながら飲み食いしました。時計は暗くなってからは見ませんでした。13:31:33でフィニッシュ、ラン4:58:50、無事完走、とりあえずサブファイブでした。

 翌朝、11時ごろ会場に行くともうリザルトが出来ていました。日本チームでは村上純子さんが10:24:34(エイジ2位)でハワイをゲットしました。他にも9時間台2人、10時間台が1人いましたが残念ながらスロットには届きませんでした。

 最終日、レースの日より早い朝3時15分に起床し、4時、宿発、5時25分の国内便でアトランタへ向かう。7時25分アトランタ着(1時間の時差あり)、広い空港内を地下鉄で国際線へ移動し、10時5分アトランタ発、帰りはさらに長い14時間のフライトでしたが、機内では来年はどのアイアンマンに出ようかの話で大いに盛り上がりました。やっぱりアイアンマンはいいですね。


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